植物は, 周辺環境の変化でストレスを受け, 普段と違う化学反応をする2012年03月14日 21:47

 野口勲氏著「タネが危ない」(*1)を読み,
植物は, 二酸化炭素濃度を, 大気中の100以上の環境にさらすと,
生理が狂って, 普段起きない現象を起こしてしまうことを知りました。
二酸化炭素がこの化学反応に関わると考えれば,
数多くある化学反応の平衡条件がずれて,
普段起きない現象(化学反応)が起こると解釈すれば良いのでしょうが,
普段起こる反応が起こらなくなるだけではないことが,
とても不思議に思えます。

 それだけなら, 植物の生理活性ってそんなものなのだ,
地球環境変動に植物がどう対応するのかという仕組みを理解し,
すごいなあ, と思うだけなのですが,
世の中には, そのような現象が起こるのなら,
わざと(人工的に)植物の生理活性を狂わせて,
植物栽培を, 人間の都合の良いようにいじってしまえ,
という話が, この本では続きました。
具体的には, (*1)の112頁から書かれていますが,
通常は自家受粉しない花を, 高濃度に酸化炭素環境にして,
生理活性を狂わせ, わざと自家受粉させ,
自家不和合性という,
F1の種(一代雑種, 交配種)をつくる技術に応用している,
という内容でした。

 F1の種は, 工業製品のように,
同じ形や色, 味の野菜や果物をつくるのに都合が良い種です。
普通に植物を自然に放つことではたくさんはできない種です。
(*1)によれば, 1960年代以降は,
超級市場(スーパーマーケット)に出回っている野菜は
このF1の種から育っている物のようです。
たとえば, 西瓜(すいか)は, F1の種が出回る以前は,
縞々の皮ではないものが流通していたらしいのです。
私が小学校の給食でお世話になった「プリンスメロン」(*2)もそうです。
トマトの「桃太郎」は, タキイ種苗(*3)が開発したF1の種です。

 遺伝の法則によって, F1の種から育った実から種を取っても,
それが成長しても元の野菜や果実の性質が
必ずしも発現しないのです。
というよりも, 多くは, 違う性質になります。
ということで, 同じ性質の野菜・果実を育てようとしたら,
種会社から種を買い続ける必要がある, ということになるのです。
種会社には都合が良い話ですが,
種や, それが育ってできる野菜や果実を食べる動物には,
都合が悪いことになるようです。
私が自然栽培を目指し, その種に,
F1の種ではなく固定種を買っているのは,
そのような知識を, 木村秋則氏の本から少し知っていたからでしたが,
この野口勲氏の本を読んで, ますます固定種の種を育てなければ,
という気持ちになりました。

 植物にとって, 過度なストレスがない環境を維持したいですね。

(*1) 野口勲「タネが危ない」日本経済新聞出版社(2011)
http://www.nikkeibook.com/book_detail/16808/
(*2) サカタのタネが開発したF1のメロン
http://www.sakataseed.co.jp/
(*3) タキイ種苗が開発したF1のトマト
http://www.takii.co.jp/

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