土壌の酸性度(pH)の測定の信頼性について2013年02月12日 19:58

 今日('13/02/12)は, 富山市営農サポートセンターで行われている
「とやま楽農学園」に出席しました。
小雪が降り, それが一面に積もった畑は,
私には眩しすぎて, 目が少しやられてしまいました(;_;)。
今日は, 土と肥料についての基礎知識の講義と,
短時間の実習でした。
講義の中で, 畑作に適する土の条件についてのお話がありました。
物理的性質である, 団粒構造, 保水性, 通気性,
化学的性質である, 保肥性, 酸性度,
そして, 生物的性質である, 微生物の話があったのですが,
このうちで, 私が専門の化学について,
いつも疑問に思うことがあります。
それは, 土壌の酸性度(pH)の測定についてです。
pH[3]は, 水素イオン濃度の指数ですので,
水素イオンがうようよしている水溶液での数値であることが基本です。
しかし, 農業で土のことを学ぶと,
「土(土壌)のpH」という物が出てきて,
しかもそれが重要だと教わります。
土は水溶液ではないので,
そのpHとは何? ということになります。
「新版農業の基礎」[4]を読むと,
土壌のpHの数値については書かれていますが,
そもそもの意味は書かれていません。
計測器企業の, 堀場製作所のウェブサイト[5]を見ると,
土壌のpHの測定について, 次のように書かれています。
> 土壌測定の場合,
> 採取する土壌の量・純水の量・かきまぜる時間・
> 放置する時間等によって,
> pH値が変化します。
> 必ず一定の量・同じ条件で測定して下さい。
(略)
> 風乾細土10gを50mlのビーカーにとり,
> 純水25gを加え, 振とう器で2時間振とうしたのち,
> 電極を上澄み液にいれて測定する。
とあります。
決まった測定方法はないようですが,
常に同じ条件で測定して下さい, とあります。
???
となると, ある人の測定法と, 別の人の測定法が
異なる可能性があります。
上の例だと, 10 gの土に25 gの純水を加えて
2時間振盪(しんとう)することになっていますが,
別の人は, 全然違う条件で振盪して
結果を出している可能性があります。
他人の測定値を単純比較ができないのです!!
事実, 群馬県のぐんまアグリネットのウェブサイト[6]では,
> 50 mLスチロールびんに風乾細土10 g, 純水25 mLを入れる。
> 栓をして30分間振とうする。
> pHの測定を行う(電極を入れてから30秒くらいおいて読む)。
となっています。
これでは, 意味がないですね。

 しかも, [4]では, 電気伝導度も測定しなければならない,
とあります。正直申し上げて, 滅茶苦茶です。
私の勉強が不足しているからかもしれませんが,
私の理解の範囲では,
土壌のpHを測っても, 意味がないようにさえ思えます。
比較する以上, 測定条件の基準が必要です。

 私は以前,
土のpHを測る簡易測定装置[7]を買ったことがあります。
土に装置を差し込むだけでpHを読み取れる装置です。
しかし, 上に書いたような, 化学で一般でキナ,
電極を使う測定に慣れた立場からすると,
この[7]の装置は, 極めて怪しい装置になります。
目安にさえなるのか分かりません。
このような装置で測る起電力でも,
充分pHを読める物なのでしょうか?

 このようなことを書いたのは,
畑の方が, 皆まちまちな方法でpHを測っていたのなら,
意味がないのではないか, ということです。
ましてや, [4]のような電気伝導度も測れ,
となると, 電極2つが必要です。
その辺りを確立しておかないと,
この土は酸性だから, 苦土石灰で中和しないと,
なんてことを言えないはずです。
本当は十分に中性に近い土壌に,
過剰に塩基を加えて,
実は塩基性土壌になっているかも知れないです。

 その辺りの実情を知りたくなりました。
「とやま楽農学園」では, そのあたりの実践はありませんでした。
それもとても重要だと思うのですが...。

[1] このブログの上の階層にある,
「おきゅうぼうやのウェブサイト」に, 説明してあります。
http://www.ne.jp/asahi/okyuu/booya/omoi/yasaisaibai/index.html
[2] http://okyuubooya.asablo.jp/blog/2012/02/22/6344537
[3] pHは, ピーエイチと読むのですが,
昔はドイツ語読みでペーハーと読んでいたため,
その影響でしょう, 未だにペーハーと読む人が多いです。
化学(だけではないでしょうけれど)では,
今はペーハーとは呼ばないようにしているのですが,
なかなか浸透しないようです。
そのようなことに拘るのが理系のはずなのですが...。
[4] 生井兵治他辺「農学基礎セミナー新版農業の基礎」,
農産漁村文化協会(2003)の, 33頁
[5] http://www.horiba.com/jp/application/material-property-characterization/water-analysis/water-quality-electrochemistry-instrumentation/the-story-of-ph-and-water-quality/measurement-of-ph/measurement-method-for-soil-sample/?tx_feloginhoriba_pi1[forgot]=1
[6] http://www.aic.pref.gunma.jp/agricultural/management/technology/soil/02/02040000.html
[7] http://www.ondokei.com/902.html