酸化鉄(II)が高温高圧だと, 違う挙動を示す, という実験2012年01月16日 21:35

 鉄の酸化物を専門としていた私なので,
表題の記事(*1)は, 面白く読ませてもらいました。
酸化鉄(II)(*2)(化学式はFeO)が, 高温高圧条件にすると,
結晶構造が変わらないのに, 電気伝導性が変化することを
見付けたようです。

 FeOという物質は, 大気圧(1気圧, 1.02 × 10^5 Pa)では,
Fe : O = 1 : 1にはなっていません。
Fe2+の一部がFe3+になっているため,
FeよりもOの方が多くなっています。
これを高圧環境へ持っていくと, Fe : O = 1 : 1を作ることができます。
電気伝導性は, バンド理論によれば, 金属的になるのですが,
実際には絶縁体とされています。
今回発表があった実験は, 70万気圧(^^;, 1600 ℃以上という,
なんだか物凄い環境だったようです。
この環境にすると, 金属としての挙動,
つまり, 高い電気伝導性を有する, というのだそうです。
そして, そう変化した原因は,
鉄原子に属する電子の, スピン状態の変化による,
と考察されていました。
電子のスピン状態が変わると, 固体の電気伝導性が変わる,
というのは, 今の私には理解できないことなのですが,
それはともかく, この高温高圧の鉄酸化物(II)の研究成果は,
固体物理学に新しい情報を提供しただけでなく,
そのまま地球内部における, 酸化鉄(II)の挙動に
当てはめられるのだそうです。
地球内部のマントルや外核部には,
この酸化鉄(II)が存在していて,
地球の自転に深く影響している, らしいです。
酸化鉄(II)がそんな物質だとは知りませんでした(^^;。

 先のブログで書いた記事よりも, こちらの方が面白そうです(^^;

(*1) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120116-00000027-mycomj-sci
上のURIで初めて記事を読み, 元の情報を検索したら,
次に辿り着きました。
http://prl.aps.org/abstract/PRL/v108/i2/e026403
更に, 文部科学省の施設SPring-8でも, 解説がありました。
実験(の一部?)は, SPring-8を使ってなされたようです。
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2012/120113

(*2) (*1)の記事では, 酸化第一鉄と書いてありますが,
これは古い呼び名で, 酸化鉄(II)と書くのが強く望まれる書き方です。
特に, SPring-8の方々には, 訂正をお願いしたいですが,
現役でない私が何を言っても駄目でしょうね(^^;。
尚私には, 鉱物名ヴスタイトの方が馴染みがある呼び方です。

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